2015私的ベストメディア

あけましておめでとうございます。申年です。
twitterやニコニコといったネットメディアからは遠ざかり、野球観戦、ボウリングなどの趣味を深める一年でした。そのあたりの変化も取り入れて、2015年の11点を選びました。


過去の発表はこちら↓


2014 http://d.hatena.ne.jp/OMIOBEAT/20150101/1420084106

2013 http://d.hatena.ne.jp/OMIOBEAT/20140102/1388446727

2012 http://d.hatena.ne.jp/OMIOBEAT/20130103/1357172912

2011 http://d.hatena.ne.jp/OMIOBEAT/20120102/1325481341


では、はりきってどうぞ!

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(1) Delta Sleep『TWIN GALAXIES』



Twin Galaxies

Twin Galaxies







toe、バトルス、SCLLなどが次々と新作を発表し、ポストロック・リバイバルと呼ぶにふさわしい年になったが、個人的にはマスロックの新星・Delta Sleepの1stを今年の洋楽ベストに推したい。USインディがかつて放っていたクリエイティビティ、野性味とスマートさ、そしてアホっぽさをバランス良く備えた素晴らしいバンドだ。こういうバンドの真似事なら日本のバンド(Man with a なんちゃらとか?)にもできるが、展開のわかりやすさ=ポップさを保ちながら高い技術と変拍子でグイグイ押していく強引さはやっぱり紅毛人でなければ成せぬ業。


こちらは2013年発表のEPから。このアホっぽさにUSインディの真髄を見た。



その他洋楽部門では、マスロックならぬマスフォーク(math folk)を自称する香港のガールズバンド・GDJYB(雞蛋蒸肉餅)に注目。7月に新婚旅行で台湾に行った影響か中華圏および東南アジアのロックに興味が出てきて、山下達郎に感化されまくったインドネシアのikkubaru"Amusement Park"なんかはドライブ時にヘビロテした。




佳作ではgirlpool "before the world was big"。キセル+slits+breedersといった趣きで日本の田舎と同じ空が欧米にも続いていることを実感できる名盤。あと去年惜しくも解散してしまったScreaming Maldiniのベスト&ライブ盤"2009-2014"。各地で話題となったcourtney barnettのデビュー作もまあまあだったが、USインディ贔屓としてはAVA LUNA"INFINITE HOUSE"を推したい。



こう見ると洋楽充実の年のようにも見えるが、Ben Folds、バトルス、SUFJAN STEVENSなどのベテラン陣が個人的には振るわなかった。BOYやKISSESなどフレンチポップ系のインパクトも薄い。そう考えてもUSインディが久々に健闘した一年だったということだろう。あ、クソキャブなんちゃらの発泡酒みたいなタイトルの新譜は論外ね。





(2) tricot『A N D』



A N D 【通常盤】

A N D 【通常盤】



対照的にパッとしない一年だった邦楽部門。結果的によく聴いたのはtricotだった。ドラマー脱退で自由度が増し、魅せるというより聴かせる楽曲が増えたことに不満を覚えるリスナーも多いだろうが、海外ツアーの成功、というか外人が「オチャーンセーンスゥースーー!!」とか熱唱しているのを見るかぎりその批判は当たらないように思える。



27:52〜あたり


cero"Obscure Ride"は文句なしの出来。Elephant Ghostを聴いて、ワールドミュージック、特にアフリカ音楽をトーキョーシティポップに昇華させるミッションは完了したと感じた。次の一作が勝負だろうな。



残り。買ったもので言うと安藤裕子"あなたが寝てる間に"、mitsume"めまい"、CARD"LUCKY ME"、Spangle call Lilli line"ghost is dead"、さよならポニーテール"円盤ゆ〜とぴあ"などルーティン化したものばかり。スパングルは復活ライブも観に行ったが尺の短さもあってそんなにグッと来なかった。あ、書き忘れたけどMindey Gledhillの来日公演は感涙モノでしたなあ。





唯一グッと来たのはeastern youthの二宮さん脱退前最後のアルバム"ボトムオブザワールド"。街の底ぉおお!!にーんげーんたーーち!!



(3) 鳥飼茜『ユー ガッタ ラブソング』





マンガ部門。鳥飼先生の著書は昨年末からちょくちょく読んでいたのだが『先生の白い嘘』から手にとったせいかバイオレンスものが多いのかと勝手に誤解して深入りしていなかった。ところが『おんなのいえ』『地獄のガールフレンド』と読み進めるうちに「この人、絶対趣味合うわ」と思ってたら案の定。短編のあとがき解説には「主人公が車のなかで聴いているピクシーズの『Hey』という曲……」(「いきとうと」)、「タイトルはくるりの曲からもらいました」(「家出娘」)なんて書いてある。居酒屋で一杯やりたいマンガ家さん第一位ってかんじ。





イザベラ・バード旅行記を題材にした『ふしぎの国のバード』も読み応えがあった。説教臭いいわゆる歴史マンガとは一線を画していて、写真起こしとおそらく緻密な取材のあとが垣間見える良作。




去年の春先の書店では志村貴子祭りが開かれていたが、あえて選ぶとすれば『こいいじ』に一票を投じたい。まめちゃんのいじけた意地っ張りぶりに世のサブカル男子たちは悩殺ですぞ。その他読み切りで、新田章『パラダイス』、須藤佑実『流寓の姉弟』、コマツシンヤ『つるまき町 夏時間』は印象に残った。



(4)中村淳彦『女子大生風俗嬢』



女子大生風俗嬢 若者貧困大国・日本のリアル (朝日新書)

女子大生風俗嬢 若者貧困大国・日本のリアル (朝日新書)



女子大生と風俗を結びつけるキーワードとして「貧困」はあっても「奨学金」が思い浮かぶ人はそんなに多くないように思える(少なくとも自分はそうだった)。JASSO(日本学生支援機構)に代表される日本型の奨学金とはその大半が貸付型であり、そのうち無利子のもの(第一種奨学金)の受給率はわずか20%で、あとは有利子(第二種奨学金)で月々3〜12万円を借りることになる。返済義務のない給付型奨学金ともなれば一般の学生には到底手の届かない代物だということがよくわかるだろう。ちなみに留学生の場合、給付型奨学金を得る=大使館推薦レベルである。


18歳の時点で4年後に500万円近い負債を背負うことを約束させられるわけだから、冷静に考えればムチャクチャである。著者は本書の最後で次のようにに述べているが、現実的では部分はあるにせよ首肯せざるを得ない。

4年間の時間とお金をかけて大学で学ぶことで、卒業後10年程度の期間で400万〜800万円という付加価値を生み出せるのか、というシビアな計算が必要だ。(中略)したがって親の世帯収入が低く、投資の回収に不安のある若者たちは、勇気を持って「通学制の大学に進学しない」[=通学課程の1割程度の学費で済む通信制大学に通う、引用者注]という選択をすることだ。(p.217-218


ぼく自身、「優秀だけどお金がない」留学生という観点から奨学金という言葉の意味を考えることの多い一年だったのだが、足元の日本の状況を鑑みるに「コトはそう簡単じゃないねえ…」と嘆息しながらも、次の一手を考えるきっかけになった。近年の中村さんの著作でも指折りの一冊である。


新書部門は小粒が多い印象。常連では原武史『「昭和天皇実録」を読む』(岩波新書)、井上章一『京都ぎらい』(朝日新書)を挙げておく。ホワイトハンズの坂爪さんが提唱する「性の公共」を体現した『はじめての不倫学』(光文社新書)は、終盤のポリアモリーの議論以外は興味深い思考実験だった。北条かや『整形した女は幸せになってるのか』(星海社新書)は帯の写真で釣られた。荻田和秀『ダンナのための妊娠出産読本』はコウノドリのモデルになった医師の独白録。ようは「夫の心配しすぎは良くないが、正しい情報を得ようとする努力は怠るな」ということ。マンガはまだ読んでないのだが筆致があんまり好かん。







(5)横田増生『仁義なき宅配』





アマゾン、ユニクロへの潜入取材で知られる著者が佐川・ヤマトなどの内部取材を通じて「送料無料」の矛盾を暴き出すルポ。インターネットが普及し、情報のフリー化が自明のものとなった現在において、モノを運ぶ輸送システムまで無料であるはずがないことなどちょっと考えれば誰にでもわかること。しかしアマゾンを筆頭とするネットショッピング業者からの運賃ダンピングが、最大手のヤマトでも人件費率が約50%という労働集約型産業である日本の物流業界を疲弊させ、「宅配ビッグバン」と著者が呼ぶような危機的状況を招いている。


姿形のある「モノ」を扱うという点で、物流業界とネット業界(ケータイ業界もそう)を同一視することは危険である。逆に言えば、どれだけヒト・モノ・カネのグローバル化フリーミアム化が進んだとしても、ヒトやモノそのものにかかるコストというものは、一定量減らすことはできても完全になくすことはできない。宅配ビジネスとはまさにこうした特徴を持つ産業のひとつで、教育、介護なんかもこれに当てはまろう。電子化されるもの・されないものの峻別が2020年以降のビジネスにも大いに影響するということを考える材料にもなった。個人的には留学生アルバイトの実態もわかる第七章「ヤマト「羽田クロノゲート」潜入記」が読み応えあり。


書籍については今年、ジャンル別ではなく形態別(マンガ/新書/単行本・雑誌)にしてみました。次点は原武史『潮目の予兆』。2015年末の朝日新聞の書評欄にも「(書評委員会に)今年も皆勤」と書いていたが、2013年から2015年までの身辺雑記が率直に綴られていて面白い。特にある読者がブログで「この人の筆致は、やや自己顕示欲が強いきらいがあるので、そこが改善されればと読むたびに思うのだが云々」と書かれたことをわざわざ書き留めているあたり、先生のチャーミングさが出ていてとてもよかった。


潮目の予兆――日記2013・4-2015・3

潮目の予兆――日記2013・4-2015・3



その他。坂場三男『大使が見た世界一親日な国・ベトナムの素顔』は在任中にすべての省・直轄市を訪問した元大使のベトナム論。李小牧『元・中国人、日本で政治家をめざす』は、元留学生・現歌舞伎町の帝王である破天荒な中国人が新宿区議会選挙に立候補した話。『POSSE』Vol.27は特集「塾とブラックバイト」、弊社の労組問題についても書かれてます。




(6)DENON ヘッドホンアンプ『DA-300USB-S』



DENON USB-DAC ヘッドホンアンプ ハイレゾ音源対応 シルバー DA-300USB-S

DENON USB-DAC ヘッドホンアンプ ハイレゾ音源対応 シルバー DA-300USB-S



ガジェット部門。PCで音楽を聴いたり動画を観る際、USBケーブルでこのアンプを経由してからスピーカーに繋げると、音像が劇的に改善されるというシロモノ。いわゆるハイレゾには手を出すまででもないが、今のデスクトップオーディオ環境には満足行っていないという人にとってはコストパフォーマンスに優れた一品ですぞ。





SONYのSRS-55Xはほぼ衝動買い。寝室にBluetoothスピーカーが欲しいと思って電気店をウロウロしていたときに発見した。真正面以外からの音像はペラッペラだが、このサイズでここまで豊かな音が出せるスピーカーを作れるのはさすがソニー。 ←信者発言


あと今さらながらpomera(DM5)を買いました。キーボードが折り畳める初期型はすでに廃版になってんのね。ところが年末にKINGJIMからportabookの発表があり、これがかなり魅力。VAIOのS11も注目度が高いので、来年のこのブログにはどちらかを買ったと書くかもね。



(7)YAMAHA『SD4355』





楽器部門。ヤマハの生産工場ラインの改編で絶版モデルとなった、13×5.5インチのブラススネア。池袋イシバシ楽器にて発見、保護(購入)した。深さがあるぶんピッコロよりも普通の14インチに近い鳴りがあるのが特徴。もちろんハイピッチにすればドラムンベースに使うようなコンコンとしたサウンドにもできる。


ここ数年は小口径のハイハット(スネア)に大口径のシンバル類という取り合わせが流行りだったのだが、11月のジミナスのライブからはPaiste Giant Beat 15' Hi-hatを導入。秋葉原のイケベで中古品がうまいこと手に入った。このシンバル、色合いが経年変化によってかなり変わるようで、新品の14'と叩き比べをしてみたが中古の15'のほうがふくよかでウォームな音で気持ちよかった。たまたまクソキャブのドラムが叩いてた動画↓がありましたね。






(8)TAILOR FIELDS



http://tailorfields.com/



新橋などにあるオーダーメイドスーツのお店。え、スーツもメディアなのかって?そりゃそうでしょう。うん。


こだわりが強すぎるくらい強い店員さんに3ピース(ジャケットはダブル)のスーツを仕立ててもらいました。納品まで2ヶ月近くはどうしてもかかるけど、生地選びからボタン、ポケット形状のチョイスまで徹底的にオーダーメイド。手直しも無料でやってくれるし、ちょっと高くついたけど満足している。


後輩の結婚式で帰札したとき、札幌のvendorが移転していたのを知らずにふらっと立ち寄ったところnonnativeのコートがかっちょよかったので買ったった。三十一路に見合うコートがなかったので、これなら数年は着られるだろう。あとsimon carterのYシャツも派手目でかっこいい。



(9)林百貨店



http://www.hayashi.com.tw/page.asp?nsub=A8A000&lang=J
http://www.taipeinavi.com/shop/486/


台湾旅行の際に立ち寄った台南のデパート。日本統治時代に建てられ、去年(2014)リニューアルオープンした。雑貨や土産品などセンスのいい品揃えで、帽子とはちみつ、お茶などを購入した。


3泊4日の強行軍ではあったが、高雄の港近くにそびえるランドマーク・高雄市立図書館 新総館、「ツタヤmeets東急ハンズ」というべき誠品書店、台北随一のドラム専門店・ニ六八音楽専門店など、台湾のサブカルチャーに触れることができたのも刺激的だった。



(10) 『セッション』(WHIPLASH) 





改めて取り上げるまでもなく2015最高の映画。フレッチャーの鬼教官っぷりに『フルメタル・ジャケット』を想起した人はぼくだけじゃないはず。バディ・リッチの名が若者にももっと広がるといいなあ。劇場で観るべし。


映画・映像部門として他に取り上げられるほど劇場には足を運ばなかったが、戦後70年ということもあり、元祖『日本のいちばん長い日』(1967)や『東京裁判』(1983)などを観る機会があった。



(11)ABS JAPAN PRIDE「MIYABI」(12ポンド)





最後はボウリング。前の職場(現在の通勤路)の近くにボウリング場があったのを思い出し、今年の6月から本格的に練習開始した。JAPAN PRIDEは安心のmade in Japanブランドで、ビギナー〜中級者向けのスペック。色も勘案してMIYABIを購入し、ここまでのハイスコアが240。ただアベレージ160行くか行かないかのレベルなので、今後はポンド数を上げるかフックボールの投げ方をプロに教わるなどしてアベレージ180を目指したい。


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以上、2015年のベストメディアでした。


(随時追記します)